2013年11月30日土曜日

システムとは何か?

システムとは何か?

前回自動経路作成を紹介しましたが、これはダクトを物理的に接続する前に、論理的な接続を行っているからこそ可能なのです。制気口と設備機器のセットをシステムと呼んでいます。
Revitのシステムは次の三つがあります。

  • システム分類
  • システムタイプ
  • システム

やたらと「システム」を連発するので、何の事だかよくわからなくなってしまいます。しかしこのシステムの概念を理解することがRevitMEPを使いこなすうえでは重要です。

サンプルファイルのダクトを選択し、プロパティを確認すると「機械」セクションに「システム分類」「システムタイプ」「システム名」「システム省略形」の4つのシステム○○があります。

ダクトを選択すると「システム」のプロパティが表示されるが・・・

システム=設備機器のネットワーク

機械設備でいえばシステムとはエアターミナルと設備機器のネットワークのことで

  • 「どの設備機器(エアハンなど)がどのエアターミナル(制気口)とつながっているか?」

を示すものです。しかし、

  • 「どの設備機器の接続要素がどのエアターミナルの接続要素とつながっているか?」

といったほうがより正確です。ヒートポンプなどの設備にはたいていの場合、給気、還気のための接続点が含まれているので、一つの設備機械が複数のシステムに属することになります。

システムを組んでみる

簡単な例で具体的に見ていきましょう。下の図では4つの吹出口と二つの吸込口、およびヒートポンプが配置されています。

制気口と設備機械
この中には次の合計8つの接続要素があります。

  • 吹出口------給気×4
  • 吸込口------還気×2
  • ヒートポンプ--給気×1と還気×1(そのほか水と電気の接続要素もある)

まずは給気システムを組んでみます。
任意の吹出口を選択すると、リボンの[修正|エアターミナル]タブの[システムを作成]パネルに[ダクト]というボタンが現れるので、これをクリックします。
吹出口を選択してシステム作成開始!
そうすると[ダクトシステムを作成]ダイアログボックスが現れます。選択した吹出口にはダクト接続要素が一つしか含まれていないので、システムタイプのコンボボックスには候補が「給気」だけ表示されます。
ダクト接続要素が一つしかない場合

一旦これをキャンセルして、ヒートポンプを選択すると今度は[修正|機械設備]タブの[システム]パネルには[ダクト][電力][配管]の三つのボタンが現れます。
ヒートポンプにはダクト接続、電気接続、配管接続類が含まれている
これは選択した機械にどのような種類の接続要素が含まれるかによって異なります。このうち「ダクト」をクリックします。
[ダクトシステムを作成]ダイアログボックスではシステムタイプに給気と還気が現れます。
ヒートポンプのダクト接続要素には給気用と還気用がある。
これはヒートポンプにダクトを接続可能な接続要素が二つあることを示しています。このうち「給気」を選択し、システム名を「機械 給気 1」とし、システムエディタ内で開くにチェックをいれてOKします。
今度は[ダクトシステムの編集]タブに切り替わります。
ダクトシステムを編集タブ
これでシステム編集準備ができました。このシステムのエアハンドリング設備は選択したヒートポンプですから、このヒートポンプが制御する制気口をシステムに追加します。
[ダクトシステムの編集]タブの[システムに追加]を選択したまま、4つの吹出口を選択します。吸込口を選択してもエラーが表示されて追加できません。
システムタイプが一致する接続要素がないと追加できない
吸込口には給気の接続要素が含まれていないので、システムに追加できないのです。

すべての吹出口を選択したら、[システム編集を終了]をクリックしてシステム完成です。
システム構成

吹出口と吸込口を交互にクリックし、[修正|エアターミナル]タブの[レイアウト]パネルの様子を比較してみます。
吹出口を選択した場合

吸込口を選択した場合
吹出口はシステム「機械 給気 1」の一員となっているので、[レイアウトを生成]ボタンが使えます。つまり自動経路探索が可能になっています。一方、まだシステムに追加されていない吸込口を選択した場合は、[レイアウトを生成]が使えません。

システムを構成することで初めてダクトルートの自動検索が可能になります。
システムに追加するとダクトルートを自動生成できる

さて、これで冒頭にかかげた3番目の「システム」については、だいたいお分かりいただけたかと思います。しかし、まだ

  • 「システム分類」
  • 「システムタイプ」

についての話は出ていません。それに接続要素が給気用なのか還気用なのかっていつどこで決まるのでしょう?

次回はさらにシステムを掘り下げます。



2013年11月9日土曜日

経路の自動探索

レイアウトの自動生成

前回は手動でダクトを接続する方法を紹介しましたが、今回はRevitに経路を探索してもらうことにしましょう。

  • 前回同様にサンプルファイルを開いてください。
  • プロジェクトブラウザのトップにある[ビュー(Simple)]を選択し、ブラウザビューのプロパティを[Advanced]に変更します。
  • [Design] > [HVAC - Design] - [平面図] - [Level2 HVAC Plan]を開き、左下隅の部屋を拡大します。

Level2 の左下隅の部屋を拡大する
この部屋にはすでにダクトが接続されていますが、これを削除して、再度接続してみましょう。部屋全体を囲み、フィルタを使って「ダクト」「ダクトタグ」「ダクト継手」「フレキシブルダクト」を選択します。
フィルタを使ってダクト類を選択
選択したら、Deleteキーをおして削除します。
ダクトを削除した後

レイアウトを生成

今回はRevitに経路を探索してもらいます。吹き出し口(☒)をどれでもいいので一つ選ぶと、リボンパネルに「レイアウトを生成」ボタンが現れます。
レイアウトを生成
これを押すと、右上のWSHPから青い線と緑の線で経路が表示されます。青い線はメインルート(本管)で緑の線はサブルート(枝管)です。
オプションバーの右向きと左向きの矢印を押せば、いくつかの候補が表示されます。
左上の設備機器から青と緑の線でダクトルートが例示される。
このまま[レイアウトを終了]をクリックすれば、ダクトが生成されますが、その前にオプションバーの[設定]をクリックしてみます。
オプションバーの[設定]をクリック!
ダクト変換設定という奇妙な名前のダイアログが現れます。(これはダクト設定の誤訳でしょう。)これをみると、本管に使用するダクトのタイプと基本的な高さと枝管のダクトとフレキシブルダクトの高さやタイプの設定ができます。
ここで、本管のオフセット(ダクトの高さ)を「3000」とし
本管のオフセットを3000mm
枝管のオフセットを「3000」、フレキシブルダクトの長さを「900」とします。(数字はプロジェクトに応じて任意に設定します。)
枝管のオフセットを3000、最大フレキシブルダクト長を900
OKを押します。そして任意のパターンを選択して「レイアウトを終了」をくりっくします。下の図は3/6のパターンを選択しました。
ダクトの自動レイアウトが完成

さらにダクトのサイズを変更します。任意のダクトをマウスオーバーして、TABキーを数回押して、ダクトとそれにつながる吹き出し口をすべて選択します。
TABキーを連打して一連のダクト経路をすべて選択
リボンの[ダクト配管のサイズ変更]をクリックするとダクトサイズ変更ダイアログが開きます。サイズ変更方法の「摩擦(おそらく圧力損失のことだろうと思われます。)」を0.64、[分岐サイズ変更]を「計算されたサイズのみ」、高さを制限のチェックを外します。
OKを押してダクトのサイズが変更されたことを確認してください。
ダクトサイズが変更された!
また、それぞれのダクトをクリックすれば、両端に青い文字で[3000]と表示され、ダクトのオフセット(高さ)が3000になっていることがわかります。
高さが表示される

なぜ接続できたのか?

このようにRevitはダクトや配管の経路を自動的に探索してくれます。またサイズの変更も条件を与えれば適切なサイズを算出してくれるので、たいへん便利です。
これでダクトや配管の接続が難しいということが単なるうわさに過ぎないことがお分かりいただけると思います。
しかし、なぜこの自動レイアウトが可能なのでしょう?なぜこれらの吹き出し口が右上のヒートポンプにつながるのでしょうか?

実はこのような物理的な接続以前に、「システム」と呼ばれる論理的な接続を行っているからなのです。MEPのシステムには「システム分類」「システムタイプ」「システム」と3つのシステムが存在します。この三つのシステムを理解することがとても重要です。

次回からはもう少し奥深いところに足を踏み入れましょう。